患者・市民のための膵がん診療ガイド 2023年版 第4版

膵がん診療のやさしい解説書、3年ぶりの改訂!

編 集 日本膵臓学会 膵癌診療ガイドライン改訂委員会
定 価 2,640円
(2,400円+税)
発行日 2023/05/20
ISBN 978-4-307-20460-6

B5判・264頁・カラー図数:48枚

在庫状況 あり

膵がん患者さんとそのご家族に常に寄り添い、強力にサポートできる書籍となるよう、膵がん診療に携わる先生方、患者団体・市民の代表の方々によって全面的に改訂されました。遺伝子・バイオマーカーなど、膵がん診療における最新情報、便利な用語集・薬剤一覧を盛り込んで全体の構成を一新。診断直後や治療中など、さまざまな場面で生じる疑問にお答えしています。膵がんを正しく知る・理解するのに最適の1冊です!


【関連書籍】膵癌診療ガイドライン 2022年版
・本書のご利用にあたって

◆膵がん診療の流れ(アルゴリズム)
膵がん診断の流れ(アルゴリズム)
膵がん治療の流れ(アルゴリズム)
膵がん化学療法の流れ(アルゴリズム)
膵がんプレシジョンメディスン(個別化医療)の流れ(アルゴリズム)

◆第1章:膵がんと診断されたら(膵がんについて)
Q1-1 膵がんとはどのような病気なのでしょうか?
Q1-2 膵がんになるとどんな症状が現れますか?
Q1-3 膵がんは遺伝するのでしょうか?

◆第2章:膵がんがわかるまで(膵がんの診断に必要な検査)
Q2-1 人間ドックや検診で膵臓を調べることはできますか?また異常がみつかったら、どうしたらよいでしょうか?
Q2-2 膵がんかどうか調べるための検査について教えてください。
Q2-3 膵がんの検査は安全ですか? リスクはありませんか?
Q2-4 検査の結果「経過観察」と言われました。どうしたらよいでしょうか?
Q2-5 血液・尿検査だけでは膵がんかどうかはわからないのでしょうか?
Q2-6 ゲノム検査、遺伝子パネルという言葉を耳にします。膵がんとどう関係がありますか?
コラム1 病診連携を生かした膵がん早期診断プロジェクト
コラム2 家族性膵がんについて

◆第3章:膵がんと診断されたときによくある質問
Q3-1 膵がんといわれました。何から考えてよいかわかりません。どうしたらよいでしょうか?
Q3-2 良い病院、良い担当医の選び方を教えてください。
Q3-3 インフォームド・コンセントとは何ですか?
Q3-4 担当の先生と話し合うとき、準備しておくことはありますか?
Q3-5 これから受ける検査や治療が不安です。別の病院に相談に行きたいのですが、どうすればよいでしょうか?
Q3-6 治療に関する費用や仕事のことが心配です。どこに相談すればよいでしょうか?
Q3-7 このガイドの他に信頼できる情報を入手できる方法はありますか?
Q3-8 喫煙や飲酒、また食事をどうすればよいのでしょうか?
Q3-9 病気やこれからの生活・治療について家族や医療者に相談したいのですが、どうすればよいでしょうか?
Q3-10 緩和ケアとはどういうものですか。いつから始めるのがよいでしょうか?
Q3-11 心のつらさについて相談したいのですが、どうしたらよいでしょうか?
Q3-12 家族に病気のことを伝えたいのですが、どうすればよいのかわかりません。
コラム3 標準治療について
コラム4 臨床試験について

◆第4章:膵がんの治療
【I.概論】
Q4-1 膵がんの進行の状況はどのように知ることができますか?
Q4-2 膵がんにはどんな種類の治療があるのでしょうか?
Q4-3 膵がんの治療はどのように決定するのでしょうか?
Q4-4 高齢者の場合、年齢により治療法を考慮する場合はありますか?
Q4-5 治療はいつまで続けるのでしょうか?効果がなくなったときや、再発・再燃したときはどうなりますか?

【II.外科的治療法】
Q4-6 外科治療をするかどうかはどのように決めていくのでしょうか?
Q4-7 根治を目指した外科治療の流れを教えてください。
Q4-8 手術は症例数の多い病院で受けるほうがよいのでしょうか?
Q4-9 外科手術の種類はどのようなものがありますか?
Q4-10 外科治療をする場合の入院期間、合併症、費用などを教えてください。
Q4-11 外科治療後の日常生活、通院などについて教えてください。

【III.放射線療法】
Q4-12 放射線療法とはどのような治療法ですか?どのような種類がありますか?
Q4-13 放射線療法の線量について教えてください。
Q4-14 ハイパーサーミア(温熱療法)とは何ですか?膵がんにも効果はあるのでしょうか?

【IV.化学療法】
Q4-15 化学療法とはどのような治療法ですか?どのような種類がありますか?
Q4-16 切除可能膵がんと診断された場合の補助療法(化学療法)について教えてください。
Q4-17 切除可能境界膵がんと診断された場合の補助療法(化学療法)について教えてください。
Q4-18 局所進行膵がんの化学療法について教えてください。
Q4-19 切除不能膵がんの二次化学療法について教えてください。
Q4-20 特殊な遺伝子変異がみつかった場合の治療について教えてください。
コラム5 分子標的治療について
コラム6 免疫チェックポイント阻害薬について
コラム7 次世代の治療法(研究段階の治療)
コラム8 膵癌診療ガイドラインにおける患者・市民参画について

◆第5章:支持療法1 ステント治療
Q5-1 黄疸があるので“胆道ステント”が必要と言われました。どのような治療法なのでしょうか?
Q5-2 胆道ステントの種類について教えてください。
Q5-3 胆道ステントは交換ができますか?また、交換はどのようなときに必要なのでしょうか?
Q5-4 ステント治療を行っても、安全に化学療法や放射線療法は受けられますか?
Q5-5 「膵がんのため胃や十二指腸が狭くなっている」と言われました。どのような治療が有効でしょうか?

◆第6章:支持療法2 その他の症状や副作用の治療
Q6-1 痛みがありますが、とれますか?
Q6-2 痛み以外の症状とその対処法を教えてください。
Q6-3 化学療法の副作用とその対処法を教えてください。

◆第7章:治療の終了について
Q7-1 「もう治療法がない」と言われました。心が揺れ動くときにどうすればよいでしょうか?
Q7-2 ホスピスや緩和ケア病棟はどのように探していけばよいでしょうか?

◆第8章:生活上のアドバイス
Q8-1 運動療法やリハビリテーションを行うことがあると聞きました。どのような場合に行うのでしょうか?
Q8-2 補完代替療法(サプリメント、漢方など)について教えてください。
Q8-3 新型コロナウイルスが流行しているので、病院に行くのが不安です。治療などどう対処すればよいのでしょうか?
Q8-4 家族はどのように支えていけばよいのでしょうか?

・用語集
・主な薬剤一覧
・おわりに
・索引
 40年ほど前、私が医師になったころには、肝がんと食道がんが膵がんと共に消化器がんの中の三大難治がんとして知られていました。その後の医学の進歩により、肝がんはウイルス性肝炎の治療法の開発により、食道がんは化学放射線療法を手術と組み合わせる治療法の開発により、治療成績が大きく改善されました。一方、膵がんはいまだに人口当たりの死亡率が上昇を続けており、部位別死亡率が2021年には肝がんを追い越して4位と上昇しています。また、2022年に発表された統計では、膵がんと診断された10人中9人以上の方が5年後には亡くなられるという結果から、膵がんの難治性が強調されています。
 なぜ、膵がんがこのように治りにくいのかに関しては、膵臓が腹部臓器の最深部にあり発見が難しいこと、胃がんにおける胃カメラのような有効な検診方法がないこと、膵がんがさまざまな要因が重なって発症しているために薬が効きにくいこと、膵がんが他の臓器へ転移しやすいことなどさまざまな原因があげられます。これらの要因に対して膵がん治療に携わる医療関係者は全力をあげて取り組んでいますが、いまだに十分な成果が得られていません。
 ただし、手術と薬物治療との組み合わせにより根治手術ができた患者さんの治療成績は明らかによくなっており、少なからぬ患者さんが膵がん手術後に天寿を全うすることができるようになっています。手術ができれば治癒の希望が持てるようになってきていますが、2/3以上の患者さんがすでに手術ができないほど進行した状態で発見され、根治手術ができないことが治療成績の向上を妨げている最大の原因です。そこで、早期発見と予防が重要と考えられますが、それには医療従事者の努力だけでは限界があります。一般市民の皆様に膵がんの発見と予防に関心を持っていただき、正しい知識を得ていただくことが重要と考えています。
 日本膵臓学会では、わが国での膵がん診療の質を均一化し治療成績を向上する目的で、2006年にその時点での最新の情報に基づいて、医師向けの『膵癌診療ガイドライン』を刊行し、それ以降、2009、2013、2016、2019年に改訂を重ねてきました。
 この度、新たに、遺伝子検査に基づく診断や高齢者を対象とした項目などの、この3年間で得られた情報を追加して2022年版を上梓し、さらにこれを受けて患者さん・ご家族を含む市民の皆様向けにわかりやすく解説したガイドを作成しました。本書が、一般市民の皆様の膵がんに対する理解を深め、早期発見と治療成績の向上に貢献することを願ってやみません。
 そして、本書の作成にご尽力されました作成委員長の奥坂拓志先生と作成委員の諸先生方に深く感謝して巻頭の言葉といたします。

2023年4月

一般社団法人 日本膵臓学会理事長
竹山 宜典